鏑木 県庁時代の同じ職場の先輩でした。すっごい怖い先輩だったので、はじめはとっつきにくいかなと思ったんだけど、話してみると人間味があって、自分の悩みをよく聞いてくれました。増田さんがいなかったら今の自分は無いと思っています。

増田 そんなことはないよ。ただ彼は愚直な人柄で仕事もよくやってくれたけど、公務員としては可もなく不可もなく、普通だったから。でも走ることには光るものがあったんで、せっかの才能だから活かせるようにしてあげたいなとは思いましたね。非常階段に座ってよくそんな話をしました。辞めるときの相談もそこで。

鏑木 県庁を辞めるとき、最後まで辞めるか辞めないか決断しきれずにいたんですよ。ほとんどの人が『そんな馬鹿なことは思いとどまれ』と反対で。そんななか、増田さんだけが後押しをしてくれた。一生一度きりだから、やりたいのならやってみればいいじゃん、できる限りのサポートはするよって。僕自身誰かに背中を押してほしかったんですけど、まさにその背中を押してくれたのが増田さんで。その言葉通り、実際にプロになってからもいろんな形でサポートしてくれた。

増田 当時で既に40歳という年齢面の懸念もあったんだけど、ここでやらなかったら絶対に後悔すると分かってたから。それならばやらないで後悔するよりも、やって後悔する方がまだいいんじゃないかとは言いました。いざ辞めるときには最低でも5年、とにかく5年は頑張れと。それが9年。よくやってると思いますよ。だから彼にメールを書くときは、ときに敢えて“鏑木選手へ”と書くんです。彼が現役にこだわっているのが分かるから。

エピソード1 本編を見る
他の記事を見る

撮影 八木伸司 / Photo by Shinji Yagi